世界の子育て

ガイアナのワヤピ族の父親は、いまでも赤ちゃんや自分を狙う悪霊の目をそらせることができると考えて、赤ちゃんが生まれてから3日間、ハンモックの上で休んでいる。

インドのある地域には、黒い色が悪魔の目をそらせ、悪霊を追い払うと信じて新生児の額に炭や煤を塗り付けている親もいる。赤ちゃんはさまざまな文化のもとで魔除けや腕輪や飾り結びをつけられて、この世から引き離されないように守られる

伝統的な慣習のなかには赤ちゃんの発達のニーズに応え、その見かけとは違って近代的な育児の考え方に近いものも多い。

アフリカやラテンアメリカの一部の社会には母親と新生児が生後数日から数週間、自らを外界から「隔離」するために家のなかに閉じこもるという伝統的な習慣がある。母親はこの期間中は、家族の介護を受け、食べ、授乳し、子どもとのきずなを強める以外は何もしない。この慣習が秘める知恵はほぼすべての先進工業国や開発途上国の多くに引き継がれて、働く母親は産休の法的権利を保障されている。

効果的な伝統的慣習のもう一つの例としてケニア、ニューカレドニア、スマトラの母親たちが自分の口に水を含んで新生児に吹きつけて、新生児の体を清めていることをあげることができる。マサイ族の母親は新生児に
水を吹きつけ、スマトラのバタク族の母親やガイアナのワヤピ族の母親は口に含んだ水を霧のように吹きつける。水を新生児に吹きつける方法はさまざまだが、すべての赤ちゃんが温湯で清められている。

コートジボワールのバウレ族の赤ちゃんは毎日2度沐浴し、湯と石鹸と植物性のスポンジでごしごし洗ってもらう。母親が赤ちゃんを2度洗ってすすいでから、むずかる赤ちゃんを胸に抱いて泣きやませる。次いで赤ちゃんの体をさすり、尻や肩を伸ばしてしこりをほぐし、頭を押して形を整える。赤ちゃんはクリームを塗り、パウダーをすり込み、香料やカオリン(白く柔らかい粘土)を塗ってもらう。身づくろいのこの段階で赤ちゃんは泣きやみ、大きな目をぱっちりとあける。この儀式が終わり、はっきりと目覚めて、活発で機嫌のいい赤ちゃんは、家族に渡されて、その手で抱きかかえられる。

さまざまな文化のもとでは、親や保護者が赤ちゃんを抱くのは赤ちゃんを移動させるための自然な方法で、そうすることが同時に赤ちゃんを守り、幼い筋肉を鍛え、刺激を与える方法でもある。背負いひも、腰帯、ヒョウ
ンの実で作ったかごや揺りかごのなかで移動するとき、赤ちゃんはいつも母親のそばにいる。母親の腕に抱かれ、母親が働くときは母親に背負われてさまざまな活動に参加しながら、絶えず触感や視覚刺激を受ける。


母親が道を走るときには上下に揺さぶられ、父親がナイフを研ぐときには地面にかがみ込み、自分を抱いてパーティで踊るときには、絶えず筋肉を使ってその動きに合わせている。

ベネズエラのエクアナ・インディアンは赤ちゃんが生まれた瞬間からはいはいするようになるまで赤ちゃんを抱いて運んでいる。

ジャワの赤ちゃんは1日の大部分を母親の胸を覆う肩掛けのなかで過ごすので、母親は赤ちゃんの求めに応じていつでも授乳できる。赤ちゃんを危険から守るため生後7カ月になるまで赤ちゃんの足を地面につけさせることはない。

人々はいまでは、母子の引きこもりの期間や赤ちゃんを抱えている間に母親との早期のきずなが強まり、赤ちゃんがほしがるときにいつでも授乳できることが赤ちゃんの安全感や他人への信頼や自尊の気持ちを強めると考えるようになった。西側世界でもいまではますます多くの母親が赤ちゃんをベビーカーから出して背負いひもで運ぶようになった。

習慣が赤ちゃんの感覚を刺激し、発達を促す。近代的慣習とは相入れないようにみえる子どもを守るための神秘的な儀式の伝統でさえも、幼児のニーズをいかに巧みに満たしているかについての綿密な検討に値する。

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